RRR棋譜物語 カナイセイジ編

デザイナーのカナイです。
『RRR』というゲームに興味を持っていただき、本当にありがとうございます。
このゲームは、王権と宗教による勢力争いを描いているのですが、遊んだ結果、ゲームに使用するタイルのキャラクター付けによって、1つの国をめぐるストーリーが展開されるようになっています。

先手のプレイヤーは必ず最初に《市民》を置くことになりますが、これは争いの対象となる国に、最初から“住んでいる住民”を示しています。
さて、後手のプレイヤーは最初から国に住まう市民を味方につける(反転させる)でしょうか?
それとも、市民を虐げる(破壊する)ような圧政を敷くのでしょうか?
そして、ゲームには次々と新しいタイルが投入されていきます。《将軍》が《修道士》たちを戦いによって打ち倒したところに、すかさず《聖騎士》たちが戦いを挑む。《枢機卿》が陰謀を企み、相手の弱みを握ることで各地の諸侯を寝返らせる。《姫》の悲痛な祈りが心を揺さぶり、再び王権の旗の下に勢力が結集する……

物語を考えるのがお好きな方は、是非「棋譜」を取ってみてください。この国がたどった歴史、そしてその結末が、そこに描かれているはずです。各マスに地方名を付け、使用されたタイルによる効果を並べていけば
あっという間にこの国の年代記の出来上がり。ロールプレイングゲームがお好きな方なら、シナリオ作成の一助にもなるかもしれません。よろしければお試しいただければと思います。

せっかくなので、私が実際に取った棋譜から書き起こした1つの例を、ここに提示させていただこうと思います。
さすがに若干の無理を感じるところもあるかとは思いますが、ご笑覧ください。
皆様がこのRRRというゲームを遊ぶ上で、普段とはちょっと違った楽しみ方もあることを知っていただければ幸いです。


なお、段落の後の「王D市民」のような表現は、実際に指された手を示しています(「王権プレイヤー」が「Dのマス」に《市民》を置いたことを示しています)。
マスの番号はマップを正位置(背景の都市などが正しい位置に見える)で見たときのマスに左上から中央上・右上・右・中央……という順番で@〜H数字を振ったものです。
また、その後に続く「対象D市民」のような表現は、置かれたタイルの能力が発動した際に選ばれた対象とその位置を示しています。

このゲームは王権側の先手で開始され、中立タイルは《海賊》《塔》《死神》《芸人》《隠者》です。




●舞台

 広大な王国の一角に、「サンアール」という地方がある。中央部に大きな内海を持つこの一帯は、起伏に富んだ地形ながらも温暖な気候で、開拓以来多くの人々が移り住んできていた。各地にはその地形に合わせて特徴ゆたかな都市が発展し、それぞれに連携を取りながら平和な日々を送っていた。
 地方の中心部にある、サンアール内海。はるか昔、莫大な魔力を用いてこの内海上空に浮かべられた浮遊島の壮麗なる空中都市「フィーベル」は、その独特な立地にもかかわらず、この地方の中心都市として栄華を誇っていた。フィーベルの王国中央に対する忠誠と納税が高い評価を受け、代々市民議会による自治が認められていることも、この地方の発展に一役買っていたと言っても過言ではないだろう。

●王D市民(王権プレイヤーが先手で開始)

 ところが、平和であったこの地方に、突如として暗雲が吹き荒れる。国王に代わってこの国の実権を握らんとする《聖教会》の最高権力者、教皇が、この地方にも侵略の手を伸ばしてきたのだ。
 フィーベルの西、沼沢地に囲まれた静かな都市「フォーニア」に、突如として教会の持つ武装戦力「聖騎士団」が押し寄せたのは、まだ冬も真っ盛りの時期であった。フォーニアを瞬く間に制圧した聖騎士団は、そこを拠点としてフィーベルに圧力をかけ、抵抗する市民議会に教会への恭順を迫った。

●教C聖騎士 対象D市民

 無論、この状況を黙って王が認めるはずもない。だが、このときの王は、争いを好まぬ穏健な性格で、直接的な武力闘争を望まなかった。王は優れた外交手腕を持つ《大臣》をフィーベルの南にある城塞都市「エイトリア」に派遣し、聖騎士団の懐柔に力を注いだ。武断派の聖騎士団も、あの手この手の策動によってついには折れ、聖教会による強引な支配を一時停止する方向へと話は進んでいった。

●王G大臣 対象C聖騎士

 しかし、教皇が進めていた計画はそれだけではなかった。フォーニアへの聖騎士団派遣と同時に、フォーニアの南にある鉱山都市「セブリン」の《神殿》を軸に強力な布教活動を進めていたのだ。これによってこの地方における宗教勢力の優勢は確かなものとなるはずであった。

●教F神殿

 ところが、ここで誤算が起きた。サンアールの南方から、中央部の内海へと流れてきた《海賊》の一派が、セブリン周辺での略奪を始めたのである。もちろん、贅を尽くした神殿がその略奪を免れるわけもない。神殿は無残にも破壊され、この地における聖教会の威光は地に落ちてしまった。サンアール各地の都市はこの海賊の脅威に震え上がったが、実のところ、この海賊の突然の来襲は王の幕僚たちが裏で手を回して宗教勢力を牽制したものであり、他の都市が略奪の対象となることは無かった。

●王D海賊 対象F神殿

 神をも恐れぬ《海賊》たちの所業に教皇は激怒した。彼は即座に武闘派の《修道士》たちを南東の商業都市「ナイナリス」へと送り込んだ。彼らは教義を理由に海賊を容赦なく狩り立て、サンアール内海の《海賊》たちを瞬く間に駆逐した。これにより、教会の失われた威光は少しずつ回復していった。皮肉にも、宗教の力を改めて民衆に示す形となったのである。

●教H―修道士 対象D海賊

 一方、王のほうでは、《大臣》の力で聖騎士団と和睦し、フォーニアに平和の象徴となる《塔》の建設を執り行なっていた。争いを好まぬ王は、これ以上この地方で戦乱の芽が育つことを避けたかったのだ。塔は無事に完成し、この地方の安定と王権による支配は揺るがぬかのように見えた。

●王C塔 (聖騎士に上書き)

 だが、教皇の野望はそれでは終わらなかった。北方の小都市「トゥーナー」に隠れ住んでいた《隠者》の力を借りて、新たな《神殿》の建立とそれを拠点とした布教の計画を練っていたのである。古代より様々な秘術を駆使して生き長らえていると言われ、様々な情報、さまざまな技術を持つ隠者によって、サンアールに宗教勢力を浸透させるための準備は着々と整っていった。

●教A隠者 対象:神殿

 同じ頃、東の「ジクセン」から流れてきた《芸人》の一座が、同じように隠者に接触を図っていた。《芸人》は仮の姿、王権勢力の工作員たる彼らは、隠者のつてによって新たな武装勢力(海賊)と連携を取り、再び宗教勢力の牽制を図ったのである。ところが、隠者は既に教皇に協力を約しており、この動きはすぐに教皇の知るところとなった。

●王E芸人 対象:A隠者 対象2:海賊

 これ以上の妨害を許すわけには行かない。業を煮やした《教皇》は、ついに自ら動くことを決断した。標高が高く、空に近いことから常に宗教と関係の深かった北東の山岳都市「スーリ」に御幸した教皇は、宗教的な理由を盾に近隣での《芸人》の興行を全て禁止し、一座に圧力をかけサンアール地方から追放したのである。これによって、王権勢力から宗教勢力への妨害工作は大きく遅れを取ることになった。

●教B教皇 対象:E芸人

 にらみ合いが始まった。王権、宗教とも、お互いにお互いをこの地方から駆逐したいが、なかなか手を出しづらい状況が続く。王はフィーベルの空中都市へと更なる援助を行い、万一のときに備えて《城》部分の強化を図る。一方の教皇は、フィーベル北西の緑多き都市「ワンドラ」に《隠者》の助けで新たに建立された《神殿》から、影響力を浸透させるべく布教を開始した。

●王D城 ●教@神殿

 ついに王が動いた。このまま《隠者》が教皇に協力する状況が続けば、今は慣習によって王の下についている都市もいずれ教皇についてしまうかも知れない。王は宮廷でも腕利きの《魔術師》に《隠者》への対応を命じた。「ジクセン」へと腰を落ち着けた《魔術師》は、最初は言葉で、次には魔法によって、《隠者》に教皇への協力をやめるよう迫った。最初は無視していた《隠者》であったが、争うことに意味無しと見ると、別の地方へと渡っていった。こうして、教皇は最大の協力者を失ってしまった。

●王E魔術師 対象A隠者

 だが、教皇もここで引き下がるわけにはいかない。片腕たる《隠者》を失った教皇は、王の片腕たる《大臣》を排除すべく、信仰篤い《司教》を「セブリン」へと送り込んだ。《大臣》は王への忠誠も厚かったが、信仰心も人一倍であったため、ついには《司教》の前で教皇には手向かわないことを約束せざるをえなくなってしまったのである。ここに来て、王権の陣営にもついにかげりが見え始めた。

●教F司教 対象G大臣

 しかし、このような状況が長く続けば、民草の苦しみも長引く。それを見かねて、無鉄砲にも教皇へと挑んだ者がいた。王が目に入れても痛くないほど可愛がっていた一人娘の《姫》である。彼女は家臣たちの制止も聞かずに王都を飛び出すと、教皇が行き来する「トゥーナー」の地へと単身乗り込んだ。最初は彼女を捕らえ交渉の材料にするつもりであった教皇も、民草のことを思い涙する《姫》の純粋な心の前についに折れ、この地方での強引な布教活動を辞めることを誓った。

●王A姫 対象上下左右(B教皇)

 こうして、サンアール地方を舞台とした権力闘争は終わった。人々は元の安寧を取り戻し、王の庇護の下、再び市民議会による統治が始まったのである。

★王権の勝ち




さて、いかがでしたでしょうか。私は文章がそれほど上手ではないので、見るに堪えない部分が多いかと思いますが、文章の上手な方が書けばもう少しちゃんとした歴史が出来上がるものと思います。いつか、他の方の棋譜から書き起こされた物語を見ることができれば、デザイナーとしてとても嬉しいですね。

ちなみに、ちょっとだけ勝負の解説を加えておきますと、この勝負は《聖女》や《枢機卿》、《女王》といった強力なタイルが使われずじまいというちょっと珍しい展開でした。むしろ、お互いのプレイヤーは《塔》や《神殿》のような破壊されない効果を持つタイルと、それを無理やり壊すための《海賊》に執着しています。中盤にこのような効果を持ったタイルが乱立した結果、複数枚のタイルに効果を与えるような強力なタイルを置く場所・タイミングがなくなってしまった、というところでしょうか。非常に面白い効果を持った《死神》も使われなかったのがちょっと残念です。